『スグレもの』 思索のために。

『青年の思索のために』 下村湖人著 〜総論〜

目まぐるしい時代の変遷によっても
  変わることのない真理を把握した名著 
           (文庫本あとがき、より)

内容は、かなり難解です。

人の共同体の中で生きる私達にとって、「愛」 「謙虚」 「滅我(私欲を捨てること)」 の三つが大切、と説きます。
それにより、多 と 個が互いに調和し合える健全な社会が築かれうる、という訳です。
そして、それにより、無論 自らを高めうることが出来る、と。


下村先生は、青年に向けてのメッセージのつもりでお書きになられたようです。
しかし! 
青年時代に青少年が直接これを読んで、内容を真に理解することは不可能でしょう。

はっきり言って、若者にはツマらん内容です。
つまり、読んでもらうとわかるのですが、ある程度人生経験がないと ちょっと心の琴線に触れにくい内容なのです。

例えば、「心窓去来」という章は、以下のような一言が延々と
200個近く 羅列(られつ)されています。

・これは真実
負けたと思うまでは負けていない、というのは、たいてい負け惜しみの自己欺瞞である。しかし、不幸だと感ずるまでは不幸ではない、というのはおそらく真実だろう。


いかがでしょうか。
これは、中年の黄昏モードに入った人間でないと共感できないのではありませんか?
若者は、いや若者だからこそ、仮に頭では理解できた気がしても、躍動感ある「心」では理解できないのです。

したがって、この本は、ある程度人生経験を積んだ中年が読むべき書物と考えます。
そして、それまでの長い人生で会得した自己のポリシーなり、生活信条なりを軌道修正する道具として使われるべきなのです。

中年以降の人間こそ、冒頭の三つ

     愛を他者に与えること
     謙虚になること
     滅我すること、  が大切になってくるのですから。

そして、中年以降の世代は、この本の真髄を噛み砕いて次世代の子供達に分かり易く口伝するか、または、自ら実行した生き方を示すべきでしょう。

よって、この本は 青年には決してオススメしません
ただしその代わり、「明るさ」・「優しさ」・「潔癖さ (不正や悪事を強く憎むこと)」、といった単純なことを青年には体得してもらいたいです


この本は、中年の思索のために、強くオススメします (笑)。


ちなみに私は高校生の時、友人の勧めにより古本屋で90円で購入しました。
当時は「つまらんなあ」と思いましたが、今は「なるほど」と共感できます。

初版は昭和30年8月。50年以上前です。現在は絶版とされているようで、文庫本での入手は困難かもしれません。



【補遺】

新装版が出たようです。

PHP研究所; 新装版 (2009/9/12)
ISBN-10: 4569773435

価格:¥ 840
『青年の思索のために』 下村湖人著 〜各論〜 

【目 次】

人生随想
 人生と出発/人力の限界/努力と天啓/理想と実践目標/
 そろばん哲学/自らを責める/進む心と退く心/
 仕事の心がまえ/ 悲運に処する道/職業に誇りをもて/
 五つの道/新しい幸福のために/社会人としての生活態度

真理に生きる
 百足虫の悲哀/法眼と玄則/苦労人/旗じるし/小発明家

心窓去来



総論でも書きましたが、はじめから淡々と読んでゆくと青年なら100%途中挫折。中年でも半分の人が途中で挫折してしまうでしょう。
という訳で、上記目次で字が必ず読んでおきたいもの。字がつぎに読みたいもの、としてみました。
まずは、ここから読み進めてゆくことをオススメします。

もちろん、赤字・青字以外のほうが、読む人によっては秀逸と思われるかもしれません。
ただし、下村先生がこの本で伝えたい事は、赤・青で9割は言い尽くされていると考えます。

あと、心窓去来、の章は自分が目にとまった項目を一日にちょっとずつ読む、という把握の仕方がよいのではないでしょうか。私は、この章の中では「愛と燈火」が好きです。愛情は自分のところで留めてはいけない−愛情は他者にも回せ、と『愛情の循環』を語ります。これは大切なことです。(世の中、愛情を受けるばかりで回さない人がいかに多いことか)。作者の伝えたい事のすべての根源はココにあると言ってよいでしょう。

それでは、ちょっぴり解説です。

◎ 法眼と玄則
中国の古い逸話のようですが、なかなか深い内容です。
玄則という禅寺の僧は、師たる法眼の説法が最初は理解できません。
しかし、さる事情があったあとは、同じ説法でも今度は理解できた、という内容です。
これはいい話ですねえ。玄則が寺を出て行った後の描写がいいです。
私もほぼ似たような体験があるから、玄則の気持ちが良くわかりました。
おそらく、この話が良いと思うか否かで、その人の現在の傲慢(ごうまん)度が分かるでしょう。
無論、良い話だ、と思った人が謙虚な人です(笑)

○ 進む心と退く心
この中の、『交響楽のごとく』という一節が非常に大事です。
ここだけなら字評価のオススメです。
国家の幸福は、個人と全体との調和が大切ですが、この調和は非常に難しいです。
これを交響楽に例えているわけです。現実には困難な課題ですが、為政者は少なからず下村先生の この言葉を噛みしめて欲しいものです。
また、庶民ひとりひとりも「個人と全体の調和」という難解なテーマを、この部分を読んで理解し心に留めておいて欲しいと思います。

○ 仕事の心構え
この中の『牛若流と弁慶流』という一節が面白いです。
内容は、牛若と弁慶がある同じ仕事をする。と、最初は派手な仕事っぷりの弁慶が圧倒的に早く終わりそうな勢い。しかし、最終的には地道な牛若が勝つ、という話です。
これは、小学生に読ませても面白いかと思います。私は、この話は子供の時、祖母から聞いて「なるほど」と思ったものです。

小学生でフト思い出しましたが、
下村湖人、といえば「次郎物語」が有名です。1部から5部まであります。
これは小学生の必読図書とやらに指定されています。
しかし、次郎物語を必読図書に指定する、というのは狂っているとしか言いようがありません。
まず子供は、4部5部は難しすぎて理解できないでしょう。真に理解するには大学生程度の教養が必要です。

1部2部に至っては、青少年には害悪すらあると考えます。
はっきり言って、陰陰滅滅とした世界が展開されるため、ハツラツとした子供には負荷がかかる上に、伝えたいテーマ「愛」がわかりにくくて結局得るものはほとんどないと考えられるからです。

もちろん、ある程度自我が確立し、ストレスに耐えうる英知や方策を身につけた大人になって読めば、これほど素晴らしい文学はありません。

これを子供に読ませようと考えた大人は「身勝手」です。
基準を子供におかず、大人の自分に基準を置いて良いものだと考え、短絡的に勧めているのですから。

次郎物語のテーマを、子供基準でも分かりやすく表現し、かつ、気高さも併せ持つ文学なら、
「君たちはどう生きるか」 吉野源三郎  でしょう。
これは、超・必読図書です。
ポイントは、読んでる時…考える力が付く。
読み終わった後…さわやかな気分になる。 ことです。

他にも、超・必読図書はありますが、それはまたの機会に。。
カルビー 【ジャガビー】 うす塩味 

ポテトスナックの究極形…かも?

私、ポテトチップが好きでして、いろいろ食べましたが、このカルビーの新作はかなりの高得点です。
というか、これ以上のものは今後出ないのでは?

とにかく旨い→是非食べてください。 
使用原料も良い→買ったら表示を見てください。
開発陣のコダワリに→拍手を送りたいです。

量が少なくてちょっと物足りない。。
でも、これだけのモノで145円で発売するなら仕方ないのかもしれません。
また、最近のポテトスナックは味は濃いし、イマイチ成長期の子供が食べるには脂質過多と思われる商品が多かったですが、これ一個ならOKでしょう。

もしかしたら、コストがかかりすぎるとかの理由で消え去るか、マイナーチェンジをして味や素材を落としてくる可能性があります。

願わくばメーカーの方針が変わらないことを。2007/3/3


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